展覧会公式 Facebook
https://www.facebook.com/uncatchable2017/
自分以外の「誰か」が同じ世界で生きている。そのことを、私たちはどのくらい精確に受け止めることができているのでしょうか。
近年、わかりやすい言葉によって編集された、誰かの「ストーリー」が、大勢の人々にとらえられ、裁かれ、無残な状態にされるようなことを数多く見かけるようになりました。キャッチーな言葉のあふれる現在、私たちは、本当は完全にわかることなどできない『誰か』のストーリーを、自分に「わかる」言葉でつかまえ、消費することを、無自覚に繰り返すようになっているのかもしれません。
このたび、3名の美術作家(牛島光太郎、田中秀介、阿児つばさ)による展覧会を、京都市北区の古民家・瑞雲庵(ずいうんあん)にて開催します。
牛島光太郎(うしじま・こうたろう/1978年・福岡県生まれ)は数年にわたって、路上に落ちている、過去に誰かの所有物であった、ボタンやキーホルダーなどの「モノ」を拾い集めてきました。牛島はそれらを丁寧に配置し、一見無関係な言葉と組み合わせることで、意味や機能から離れた、そのもの自体の存在を見出そうとします。
田中秀介(たなか・しゅうすけ/1986年・和歌山県生まれ)は、仕事に従事する人々や、光を浴びる建物の姿など、一見何の変哲もないながらも、どこか印象に残る場面を描いています。田中は、現在自らが「見ている」と思っているものが、一体どのようなもの・ことであるのかを、描くことで紐解きます。タイトルとして与えられた言葉は、さらに広がりのある情景を画面にもたらします。
阿児つばさ(あこ・つばさ/1991年・兵庫県生まれ)は、ふと出会った「わからない」言葉やイメージを出発点に、ドローイング、写真、旅やリサーチ、パフォーマンスと、さまざまな方法で思考を展開してきました。ものや人々を介して、徐々に『わからない』へと近づく阿児は、自身の作品を、ストーリーでも物語でもない、一寸先の未来に向けて発せられた「シナリオ」と位置づけます。
彼らは、過去・現在・未来における、「わからない」ものを扱いながらも、それらを簡単に「わかる」ものにしようとはしません。そのことは、わからない何かの輪郭をなぞりながらも、安易につかまえることなく、むしろどこまでも逃がそうとする試みのようでもあります。
発された言葉が、一瞬のうちに広まり、多くの人につかまえられてしまうような状況で、自覚できないほどたやすく、加害者や被害者になってしまうことがあります。それでも、言葉がなければ知り得なかったかもしれない「誰か」のことに、無関心にならず、その『つかまえられないストーリー』とともに生きるための態度やすべを、彼らの作品から見つけることができるのではないでしょうか。
武本彩子(本展企画)
主催|「アンキャッチャブル・ストーリー」展実行委員会
企画・キュレーション|武本彩子
助成|公益財団法人西枝財団、アーツサポート関西
協力|Gallery PARC
デザイン|三重野龍
メイン画像|田中秀介《いりいるうり》木製パネルにキャンバス・油彩(2017)
運営協力|平野成悟
お問合せ|本展実行委員会
E-mail:uncatchable2017@gmail.com
TEL&FAX:075-231-0706(Gallery PARC)
※特に記載のないものは参加無料・事前申込不要
※スケジュールや内容は変更する場合があります。最新情報は本展公式Facebookでご確認ください。